同じ人を好きになるなんて
だが、陸斗が私の腕をさらに強く握ると突然顔が近づき、次の瞬間私の唇を押し付けるように陸斗が私にキスをしたのだ。

一体何が起こっているのかわからなかった。

かき乱さないでと言ったのに、それを裏切るような激しいキス。

心臓が飛び出てしまいそうなほどドキドキして、でも懐かしさを感じずにはいられなかった。

私が唯一知っているキス。

後にも先にも私は陸斗以外の男性とキスしたことはない。

この柔らかい唇の感触も、互いの気持ちを確かめるように触れては離れ、また触れてを繰り返すキスに私は何度も溶かされたことを思い出す。

そして心の底から彼に愛されたいって想いが溢れでてしまうような優しく情熱的なキス。

だけどどうして?

なんで私にこんなことをするの?どうして?

ハッと我に返った私は逃げるように唇を離し、陸斗との距離をとった。

まだ心臓はばくばくとうるさい。

「なんで?なんでこんなことするの?」

私の声は震えていた。

陸斗は手の甲で唇を拭うと鋭い眼差しを向けた。

「俺はまだ終わってないんだよ。まゆりが自分の気持ちに気づくまで俺は何度だってお前をかき乱してやる」

「え?」

何を言い返せばいいいのかわからなくなった。

陸斗は掴んでいた腕を離すと立ち上がった。

そして「おやすみ」と小さな声で告げると2階へと行ってしまった。

残された私はただただ放心状態で何も考えられなかった。
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