同じ人を好きになるなんて
「過去は過去。今の私はあの時の私とは違うのよ」

強い口調で言ったものの視線を逸らしてしまったのは、自分の言葉に自信がないから?

いやそうじゃない。自分のしようとしていることを正当化したいのだ。

だが陸斗は私の両肩を掴み無理やり自分の方に向けた。

「何があの時の私とは違うだ。まったく変わってないよ。まゆりは……」

陸斗の私を見る目が付き合っていた頃のあの優しい眼差しで、胸がぎゅっと掴まれるような痛みを感じた。

いやいやこんな時にドキッとしてどうするの?

「わかったようなこと言わないでよ」

だが陸斗は納得できないと言わんばかりに首を横に振った。

「自分よりも他人のことを気にかけるところも、おっちょこちょいで放っておけないところも、何事にも一生懸命なところも……そして美味しそうに食べる姿……どれも俺の知っているまゆりで何も変わってない」

なんでそんなに真っ直ぐなの?

なんで?

だったらだったらなんであの時私を無理やりにでも暴走する私を全身で受け止めてくれなかったの?

もう、遅いのよ……あなたがどんなに私に優しくしたってどうにかなるわけがない。
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