同じ人を好きになるなんて
ドクッ、ドクッと鼓動が身体中に強く響いている。

なんで、なんでここで会うの？

私はとっさに陸斗との距離をとった。

数年振りに見る陸斗に大きな変化はなかった。

強いて言えば大人っぽくなって髪の毛が学生の頃より長くなってワイルドさが増していた。

だが今の私は元彼との再会を懐かしがってる余裕などなかった。

道路に落ちた求人情報誌を奪う様に拾いい上げ、視線を合わさない様に一礼して、きた道を戻ろうとした。

だが、それを阻止するかのように掴まれた。

それも一人は私のバッグの紐、もう一人は私のスカートの裾。

「あ、あの？」

「お姉ちゃん、行かないで？」

「えー？」

ず、ずるい。まだ子供なのに潤んだ瞳で私の動きを止めようとしている。

「全然汚れが取れていないし、このまま帰らせるわけにはいかないよ。なあ？理人」

「うん」

理人くんという男の子は力強く頷いた。

「でしたらクリーニング代をいただければそれでいいです」

正直１秒たりともここにいたくない気分だ。

でもなんでそんな気持ちになるの？

後ろめたいから？それとも未練があるから？

いや違う。未練はないと思う。この５年間思い出したことはなかった。数分前までは。
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