同じ人を好きになるなんて
こんな天使のような笑顔を向けられたら断るのに勇気がいる。

陸斗はそんな私と理人くんを見てニヤリと笑った。

「なあ、理人」

「なあに?」

「このお姉さんが保育園の送り迎えしてくれるって言ったら嬉しいか?」

ちょ、ちょっとこんなやり方ずるくない?

理人くんはスプーンを置くととびきりの笑顔を見せて

「お姉ちゃんが僕の保育園の送り迎えに来てくれるの?」と嬉しそうだ。

こんな顔されたら断るにも断れないじゃない。

「綱島さん?」

「陸斗でいいよ。昔みたいに」

そういう言い方をされるのが今一番困る。

だが、もしこれを引き受けたとしても私にはまだ解決しなきゃならないことがある。
引っ越しだ。

万が一引き受けたとしても、職業はなんて書けばいいの?家政婦?フリーの家政婦?

そうだ……保証人はどうするの?もちろん保証人なしの物件はあるけど私には時間もない。

「せっかくのお話ですが……やっぱりできません」

私は丁寧に断った。
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