同じ人を好きになるなんて
「ただい––」

普段ならもっと遅く帰ってくるはずの陸斗がリビングの入り口に立っていた。

「あ!陸パパおかえり〜。今ね〜まゆり姉ちゃんと一緒にお風呂入ってたんだよ」

「え?い、一緒に?」と言って私の方を見た陸斗。

思い切り目が合ってしまった。

驚いて動きを止め、すぐに我に返り、脱衣所へ行こうとしたが、その瞬間身体に巻きつけていたバスタオルがパサっと床に落ちてしまった。

一瞬何が起こったのかわからなかった。

だがりっくんが「あ〜!まゆり姉ちゃんが裸になった〜」と指をさされ、今の状況を知る。

と同時にバスタオルを拾い上げる以前にどういうわけか陸斗と目があってしまった。

陸斗も目を丸くし、驚きながらさっと視線を逸らした。

私は乱暴にバスタオルを拾い上げるとそのままお風呂に直行し、恥ずかし沙のあまり再びバスタブの中に入ってしまった。

頭の中が「見られた。裸を見られた」という言葉が埋め尽くされた。

時間が経てばたつほど心臓がバクバクする。

バスタオルが落ちて陸斗に裸を見られた映像が頭から離れない。

どうしてバスタオルが落ちちゃうの?どうして今日に限って早く帰ってくるの?

いくら元彼とはいえ今は家政婦とその雇い主という関係。

もう、恥ずかしくてここから出られない。
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