君がキライなそのワケは
殴らず下ろしたこぶし見つめ
「……それにしてもさぁ。莉子がそこまで怒るって、なんだか珍しいよねぇ」
「そう?」

富美は結局、シェイクやハンバーガーやら色々頼んでモリモリ食べている。
この子は見た目、細身でスタイル良いのにその実物凄く食べるんだった。

(相変わらず、この食料はどこに消えるんだろう……)

ぺったんこのお腹しているクセに。
でもすごく美味しそうに食べる。

「莉子ってさ。普段なら嫌なこと言われても、華麗にスルーか冷静に理詰めで相手を論破していくじゃん」
「そうだったかなァ……」

確かにあんなに激昂するのは初めてかもしれない。

「……私、アイツ嫌いだ」
「うん、すっごくよく分かったよ」

富美は苦笑いして、ハンバーガーに齧り付いた。

「チャラくてちょっと顔良いからって。女に騒がれて良い気になってそうな男」
「確かにイケメンだったよねぇ」

私はポテトをつまみながら愚痴った。

「あと。なんか気に入らないんだよ……あの男。わかんないけど」

これが生理的に無理ってやつなんだろうか。
ん? ちょっと違う?

「どうかなぁ……まぁ確かにあの言葉は無いね」

富美はハンバーガーを数分で食べ終えて、ポテト殲滅にかかったようだ。

私はよく食べる親友をじっと観察していた。
可愛くてこの通りスタイル良くて、お淑やかで優しくて。

私なんかよりよっぽど素敵な女の子だ。
それでいて私より強くて賢いからすごくズルい。

ズルいのに、一緒にいるとすごく安心出来る。
そんな子だ。

……ポテトが無くなるのに数分もかからなかった。

「初対面で言う台詞じゃないねぇ……あ、ナゲット忘れてた」
「まだ食べるの?」
「うん。ちょっと待ってて」

そう言って行ってしまった。
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