君がキライなそのワケは
(確かに富美の言う通りなんだよなァ)

城崎 涼介。
あの顔を見るとどうも胸がモヤモヤした物に満たされて落ち着かなくなる。

太郎さんとすごく似ているのに。

(あ、違う。目が、違う)

目の色が違う。
太郎さんの瞳は黒い。私達と同じだ。
でもアイツの瞳は………。

「……すみれ色」
「スミレがなんだって?」
「わぁぁっっ!!」

いつの間に戻っできたのか。
ナゲットを頬張りながら覗き込んできた富美に吃驚して思わず声を上げてしまう。

「べ、別になんでもない」
「ふぅん」

それ以上なにも聞かず、富美はモグモグと口を忙しそうに動かしている。

「あ、1個いる?」
「いや。いい」
「美味しいよぉ? でも夕飯あるし、これくらいにしとこうかな!」

(夕飯も食べるのかよ……)

本当にどこに消えるんだろう。

「……よし!行こっか」
「え、どこに?」

おもむろに立ち上がって言うから聞き返すと。

「決まってるでしょ! ……ほら立って」

と半ば無理矢理私を立たせて、腕を引っ張ってきた。

「ちょっ、ちょっと! なに? どこ行く……イテッ」

今度は私が走る富美を追いかける事になった。
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