君がキライなそのワケは
「よしっ、 声掛けてくる!」
「やめろぉぉぉっ!!」

嬉嬉として走り出そうとする富美の肩をガシッと掴んで止める。

(こ、こんなの……ストーカーみたいじゃあないか!)

最近ようやく毎朝顔を合わせるのに慣れたのに。
太郎さんは優しいから怒らないだろうけど。
困らせたり、うっとおしがられたら最悪。
三日間はたっぷり泣き暮らす自信はある。

「えー」
「えー、じゃない! 帰ろう? ね? 帰ろう!」
「うーん」
「コンビニでなんでも奢るからっ! な?」
「……やっぱり声かけちゃおう」
「こらぁぁっ!」

騒ぎ過ぎたんだろう。
後ろを向いていた太郎さんが、気がついたらこっちへ歩いて来る所だった。

「うわわわ! ちょっと、来たじゃあないか!」
「あ。本当だぁ」
「おいおいおいおい!」

さすがに逃げる訳にいかない。
私は若干親友を恨みつつ、ぎこちない笑顔で大好きな人が歩いてくるのを眺めていた。

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