君がキライなそのワケは
「やぁ、莉子ちゃんじゃないか。ここで会うとは思わなかったな」

優しい顔と声には驚きの色はあったものの、困惑や嫌悪のそれはなくて少しホッとした。

「あ、あの。近くまで来たものですから……その」

すると横から富美が声をあげる。

「あれぇ? 涼介君もいるね」
「ええっ!? あっ!!」

太郎さんの背中に隠れるようにいた見知った姿に、私も声を上げた。

「……居たら悪いかよ」

決まり悪そうにこちらを覗いている涼介が、舌打ちをして言う。

「人の身体の影で隠れん坊は感心せんな。涼介」
「分かったよ、兄貴……くそっ」

悪態をつきながら渋々出てきた涼介を見ると、やはり顔は似ているな。顔は。

「んだよ」
「べ、別に」

さっきはさすがに私の態度が良くなかったと謝ろうかと一瞬思ったが。

「……チッ」

コイツ、舌打ちしやがった。
こっち思い切り睨み付けてきやがってぇぇぇ!!

(この野郎……絶対謝らないからなっ!)

私も負けじと睨みつける。

「ちょっと、莉子ちゃん? これじゃあヤンキー同士の喧嘩だから! 二人ともなんなの………前世で殺し合いでもしたの!?」

割って入った富美に免じて視線を外す。
また舌打ちが聞こえた。

(コイツ、今度ぶん殴ってやる!)

隠した拳をそっと固めて努めて笑顔を作った。


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