君がキライなそのワケは
それからも富美と太郎さんは話が合うみたいだった。
太郎さんが勤める大学の事から、学部について色々と尋ねる彼女。
それに笑顔で答える彼。

私はジュースを飲むふりをして、下を向いた。

(なんで私、ここにいるんだろう……)

間違っても富美を恨むとか腹を立てるとかそういう事じゃあない。

ただ自分が嫌だった。
こんなことで。
親友の方が好きな人と仲良くしてるだけなのに。

(なんでこんなに情けなくて、涙が出そうなんだろ)

泣いちゃいけない。
泣いたら二人が困ってしまう。
富美も太郎さんも困らせたくない。大好きだから。

「……おい」
「ンだよ」

(よりにもよって今話しかけてくんな)

ギロッと音が出そうなくらいキツく、話しかけてきた涼介を睨む。

「アンタなぁ……まぁいいや。ちょっとツラ貸せ」
「は? わっ、ちょっと!」

突然手を引かれて立たされた。
そのまま部屋を出て、廊下から階段。
そして階段を上がってすぐの部屋に連れて行かれた。

「お、おいっ、何のつもりだ! 離せっ」
「うるせぇ。騒ぐなよ」

(なんだコイツ……まさか、ないよな)

いくらこのチャラ男でもいきなり女を部屋に連れ込んでどうこうしようってことは。

(いや、そもそも私はコイツの何を知っているって言うんだ……)

良くない印象の初対面から、次に会ったら喧嘩して。
それから喧嘩以外の会話はほとんどしてない。
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