君がキライなそのワケは
黒雲
白いワンピース姿の少女が泣いている。
その傍で少年が腕を振り上げ何かを叫んでいる。

何を叫んでいるのか。
何故か泣いているのか。分からない。

二人の前に真っ黒で大きな影が歩いてくる。
少年はさらに大きく腕を広げ、少女を守ろうとした。

『………』

大きな影は何かを言ったようだ。
しかしその声もまた聞こえない。
ただ影の口の部分が大きく避けてパクパクと何かを話すうだった。

しゃがみこみ泣いていた少女が立ち上がった。
震える身体で、少年を押した。
そして影のすぐ目の前まで歩き出した。

「……っ!!」

少年は叫んだ。
少女は巨大な影に手を伸ばす。

―――バサッ、と少女のワンピースが足元に落ちた。
< 20 / 32 >

この作品をシェア

pagetop