君がキライなそのワケは
身を捩ってみても咳払いしても、その手はしつこく私の身体を触り続けた。

(くそっ、いい加減にッ……!)

声を上げようと息を吸う。

「……っ!?」

しかしそれが上手く声にならない。
息を吸って吐くことすらちゃんと出来ずに、歪な呼吸音だけが私を焦らせて苦しめる。

「……はぁっ、あ、ぐっ……ぅうっ……」

必死で目の前のドアに縋りつき外見る。
いつも景色。
でも後ろを這い回る手が容赦なく前に回ってくる。

(やめろッ、やだっ……離せぇッ!)

声に出ない言葉が胸を詰まらせていく。
目から涙が溢れて流れ落ちた。
その瞬間。

「……おい、お前何をしている」
「!!」

小さいがハッキリと聞こえた低い声。

途端、後ろが騒がしくなった。
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