君がキライなそのワケは
ずっと前からおかしかった。
兆候は最初からあったはず。

早熟そうに見えて、実はとても無邪気な莉子。
そこを付け込まれたのだろう。

小児性愛者。思えば彼はまさにそれだった。
心身ともに順調に成長していく少女を……あの変態は何を思って見ていたのだろう。

時間がない、とヤツはナイフを振り回して喚き散らしていたっけな。
ロリコンっていうのはここまでヤバい奴なのか。

……莉子が居なくなった。と聞いた時。
僕も太郎も、もしかしたら涼介も陽太の事を考えた。

家が一番近かった僕が最初に乗り込んだけれど、後からいろんな人達に散々叱られたっけな。

特に太郎は泣いてた。
初めて見る彼の泣き顔。
不覚ながらキュンときたのは、後々の墓場まで持っていく秘密になった。

……ま、それはさておき。

あの時、僕は莉子を守ろうとしたし。
彼女も僕を守ろうとしてくれた。

あー、そうだ。好きだったんだ。彼女のことが。
幼い恋心だと笑ってくれるな。
結構本気だったんだから。

でも結局いい所は、飛び込んできた涼介に取られたし僕は危ないことをするな、と叱られるし。
(涼介もだけど)

中でも一番変わってしまったのは莉子だった。

まず白いワンピースが着れなくなった。
さらにワンピースが。
スカートすらはけなくなって。

遂には男の子みたいな格好しか出来なくなった。

中学の時はそれでなかなか苦労して、高校は私服通学可能な学校まで足を伸ばすことにしたらしい。

僕はと言うと、中学の時にこれまた『色々』あって。
逆に男の格好が出来なくなった。

……色々。うん、これはまたいつか語ろう。
僕だってトラウマ級の出来事、そうおいそれとは話せないし。

とにかく彼女は男装、僕は女装生活になった訳だが。

高校で再会した莉子。相変わらずだった。

彼女はあの事件だけでなく、僕達の事も忘れていた。
仕方のない事だと思う。

……それだけの傷を、彼女は心に受けたってことだから。

僕は一人の親友として、莉子の側にいる事に決めた。
思い出してくれなくても良い。

一見すれば特殊な性癖とも取られかねない彼女の味方の一人になりたかったのだ。





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