俺の、となりにいろ。
四階のお局様
先日、テレビで桜の開花宣言を見た。
もう春なんだ…と、キーボードを叩く手を止めて、少し離れた窓から水色に広がる空を見上げた。
広い部屋にズラリと並んだスチール棚。棚には所狭しと置かれた社内備品たち。
カウンターには今日納品されたばかりのコピー機のカートリッジと、重々しく積まれたコピー用紙。
天井の照明は背の高いスチール棚に邪魔されて、部屋全体が薄暗い。
そんな備品室の隅でスチール机にパソコンを置き、まるで鎮座する備品たちの下僕のように、ひっそりと仕事をする。
この大手建設会社桐谷ハウジングの本社で社内の備品の手配と管理をすることが、私、松坂 咲(まつざか えみ)の仕事だ。
総務部庶務課に異動になって、もうすぐ七年になる。直属の上司はいるが、庶務課事務所にデスクがあるため、この部屋は私一人だけだ。決められた業務を終わらせて、定時になったら戸締まりをして帰宅すればいい。
四階の備品室で社内の誰よりも息を潜めて仕事をする私は、いつしか社員たちから「四階のお局様」と呼ばれていた。
「春だなぁ…」
私は今年、32歳になる。
もう春なんだ…と、キーボードを叩く手を止めて、少し離れた窓から水色に広がる空を見上げた。
広い部屋にズラリと並んだスチール棚。棚には所狭しと置かれた社内備品たち。
カウンターには今日納品されたばかりのコピー機のカートリッジと、重々しく積まれたコピー用紙。
天井の照明は背の高いスチール棚に邪魔されて、部屋全体が薄暗い。
そんな備品室の隅でスチール机にパソコンを置き、まるで鎮座する備品たちの下僕のように、ひっそりと仕事をする。
この大手建設会社桐谷ハウジングの本社で社内の備品の手配と管理をすることが、私、松坂 咲(まつざか えみ)の仕事だ。
総務部庶務課に異動になって、もうすぐ七年になる。直属の上司はいるが、庶務課事務所にデスクがあるため、この部屋は私一人だけだ。決められた業務を終わらせて、定時になったら戸締まりをして帰宅すればいい。
四階の備品室で社内の誰よりも息を潜めて仕事をする私は、いつしか社員たちから「四階のお局様」と呼ばれていた。
「春だなぁ…」
私は今年、32歳になる。
< 1 / 161 >