俺の、となりにいろ。
「ああ、とうとう言ってしまった」と、心の中で思っても、本能のままに口が動いていく。
「当時、桃香さんは「行いを認めて反省して頂ければ訴えない」と、言っていました。そして彼女は「あのこと」についても気にしていました」
私の声は緊張して、すっかり震えている。
宇田支店長はそんな私を、両目をスッと細くして見つめた。
いつの間にか、自分たちは多くの人たちに囲まれていた。本当は目立つことは大嫌いだ。でも、この男に「あのこと」だけは言わなければ、私は桃香さんに対して絶対後悔する。
震え続ける足に、再び力を入れる。