俺の、となりにいろ。

一気に大声を出し続けた宇田支店長の声が途切れた時、隣に人の気配を感じた。その人物を見て「あ、あなたは」と口を開いた時。

「そうか。君がそうなってしまったのは、僕たち上層部の失態だったということか」
と、その人は宇田支店長へポツリと言った。

宇田支店長はその人を見て、目を大きく開いて驚いた。

「桐谷専務…」

と、呟いた。

隣のロマンスグレー、桐谷専務は宇田支店長を憂いを帯びた瞳で見つめる。
「大学の後輩だった君はこの会社に入社して、一生懸命仕事を覚える真面目な社員だった。出世しても面倒な仕事も嫌な顔をせず引き受けて、社員みんなから信頼されていたのに」

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