俺の、となりにいろ。
 タオルで彼の髪と顔を拭く。
 背の高い彼に自然と背伸びになる。

 目の横や口元に殴られたような紫のアザがある。よく見ると、綺麗な顔立ちの若い男の子だった。
 黒っぽいシャツもデニムも、雨でぐっしょりと水気を吸っていた。男の子はゆっくりとシャツに触れた私を、何も言わずじっと見ていた。

 その切れ長の瞳が、とても綺麗だと思った。

 視線を交わす私の脳内は、泥のように混沌としていた。

 明日からどうなるかなんて、分かりたくもない。
 生きていけるかどうかなんて、分かりたくもない。

 男の子は私の顔にそっと手を当てて、親指でゆっくりと目元を拭った。
 自分は泣いているのだ、と初めて気づいた。
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