俺の、となりにいろ。
「専務、努力だけでは、信頼だけでは家は建ちません。出世して責任を持つようになると、いろいろなことを覚えてしまうものなんだ」
仮面が剥がれたかのように、宇田支店長は自身を取り繕うことなく、捨て台詞を吐く。


「真面目のどこが悪いんですか。全ては自分の弱さじゃないですか」


秀人の声に、私は彼を見上げた。
彼はスッと瞳に眼光を滲ませて、宇田支店長を睨んだ。

「あなたの生き様には興味はありませんが、チョロチョロ小細工する連中が、汗を流して真面目に仕事する人々に失礼だと思いませんか?」

宇田支店長が押し黙る。
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