俺の、となりにいろ。


退散していく社員たちの中で聞こえた声。

「所詮、宇田支店長も大した人間じゃなかったな」


「…え?」
はっきり聞こえたその声に、振り向いた私。
そして同時に、腰の手の温もりが消えていた。

「おい」

見渡せば少し離れたところで、秀人は男性社員を引き止めていた。
「なんですか」と、なに食わぬ顔で秀人を見る彼に、秀人は相手の胸ぐらを思いっきり掴み引き寄せた。
近くの女子社員の何人かが「きゃっ」と、小さな悲鳴を上げた。
< 133 / 161 >

この作品をシェア

pagetop