俺の、となりにいろ。
退散していく社員たちの中で聞こえた声。
「所詮、宇田支店長も大した人間じゃなかったな」
「…え?」
はっきり聞こえたその声に、振り向いた私。
そして同時に、腰の手の温もりが消えていた。
「おい」
見渡せば少し離れたところで、秀人は男性社員を引き止めていた。
「なんですか」と、なに食わぬ顔で秀人を見る彼に、秀人は相手の胸ぐらを思いっきり掴み引き寄せた。
近くの女子社員の何人かが「きゃっ」と、小さな悲鳴を上げた。