俺の、となりにいろ。

「それから仲本桜子も退職したらしい」

秀人は城ノ内主任の「ついで」のように話す。
噂好きな女子社員の間では「桐谷課長に一番近い仲本桜子は、四階のお局様に負けたショックで会社を辞めた」と、言われている。
秀人は、
「俺は最初から咲以外興味ない」
と、まるで他人事のように関心がなかった。
彼らしいと言えば、彼らしいのだが。


休憩時間はまだある。
のんびりしている秀人に「気になってることがあるの」と言ってみた。
秀人は柔らかく笑って、
「なに?俺のスリーサイズ?」
なんて、からかって目を細める。

「もう。ちがうよ」
──私よりウエスト細いでしょ、きっと。
その言葉は飲み込んだ。

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