俺の、となりにいろ。
そして、もう一つ。
「宇田支店長の不正のことは、どうして知っていたの?」
その質問には、彼は「うーん」と呟いて軽く視線を上に向けると、
「まあ、上層部から聞いて、な。少し調べるように頼まれたんだ」
と、曖昧な返事をした。
「秀人、あのね……」
宇田支店長の不正を最初に疑ったのは、おそらく山岸桃香だろう。
彼女は偶然、宇田支店長のパソコンを見た日に私に言ったのだ。
「宇田部長が、下請け業者と変な繋がりがあるみたい…」
これらは誰にも言っていない。
秀人に、初めて打ち明けた。
「……」
彼は黙って聞いている。
「桃香さんが病気になって、私も宇田支店長に為す術もなく、会社を辞めようとした。でもあの日、秀人に会って思ったの。名前も知らない人に抱かれる勇気があるなら、あの会社で陰口を言われるくらい耐えられるかも、と思って」
──もう、気持ちが抑えられない。
「でも、そうじゃなかった。秀人は私のことを覚えててくれて、私の胸の内を晴らしてくれた。秀人は私の大切な人で、大切な恩人で、大切な大好きな…っ」