俺の、となりにいろ。
処女だとバレたことに恥ずかしい思いをしたことは、思い出として残った今でも変わらない。

彼のメモには、その言葉と携帯番号、そして「桐谷秀人」の名前だった。私のICカードがある、ということは、きっと名前も勤務先も知られただろう。

不思議なもので、一晩女として抱かれたというのに、自分の気持ちは驚くほど落ち着いていた。

好奇の目に晒されたこの会社で、私は上層部の下した処遇を冷静に受け取った。
「総務部異動」 という辞令に、「あの男」を尊敬する社員たちから、「会社を辞めろ」「居座るなんて図々しい」と散々言われたが、食い下がり続けたのが今の私だ。

どんな形であれ、この会社にいることは桐谷秀人のおかげだと思っている。
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