俺の、となりにいろ。
スッと私の体の前に紙の束が差し出された。立ち止まり、チラリとその束に視線を落とす。

「昨日、営業から来た備品依頼書だ。引取りが今日のものもあるから在庫を確認して、不足のものがあれば担当者に連絡して欲しい」

淡々と事務的に用件を言う城ノ内主任に、私は「はい」と返事をしてそれを受け取った。
彼は眼鏡の奥の冷ややかな目を私に向けて、
「では、お願いします」
と言って部屋から去っていった。

城ノ内主任は特に私のことをどうこう言う人ではないけれど、会う毎にじっと向けられる視線が苦手だ。
ヘビに睨まれたカエルの気持ちになり、ゾクリと背中が震える。
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