俺の、となりにいろ。

「あ、宇田支店長。お話の邪魔をしてスミマセン。急ぎだったもので、声をかけてしまいました」

桐谷秀人の申し訳なさそうな口調に、宇田支店長の眉がピクリと動いた。
「なに、かまわんよ。久しぶりに顔を見たからね、少し話しただけだよ」
と、軽く笑う。
そして私に「じゃあね」と、言い残して去っていった。

廊下を曲がって姿が消えた宇田支店長にホットして、足の力が抜けて、その場に座り込みそうになった。
桐谷秀人が私の腕をグッと掴みあげる。
「大丈夫か?」
「す、すみません…」

何とか立ち上がった私に、彼の腕が離れていく。掴まれた部分が仄かに熱を帯びる。

たった、一つ二つの彼の短い言葉も声も、私に安堵と勇気を与えてくれる。

宇田支店長に再会したことはショックだったけど、それ以上に桐谷秀人の再会で元気になれた気がした。
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