俺の、となりにいろ。
「…」
できるだけ大きな口で、おにぎりに齧り付いた。
そして、三つめのおにぎりを、桐谷秀人に差し出した。
「え?」
彼は少し驚いた顔で私を見たが、私はそれどころではない。
めいっぱい口の中に押し込んだおにぎりで、声を出すことさえ出来ないのだ。
ただ、「食べて」という気持ちを込めて、おにぎりを彼の目の前に置くだけだった。
やっとのことでペットボトルのお茶を口の中へ流し込み、「ふぅ」と息をつく。
その横で、桐谷秀人は遠慮気味に「いいのか?」と聞いてきた。
「はい。私はお腹いっぱいですし、宇田支店長のことは本当に助かりましたので」
と、正直な気持ちを伝えて「お礼です」と付け加えた。
彼はじっと切れ長の瞳で私を見たが、口角を少し上げると「そうか」と言って、おにぎりを手に取った。