俺の、となりにいろ。

　「咲さん。大きなニュースが二つあります」

彼女はそう言って、右手でピースをする。
「ニュース？どうしたの？」
と、私は首を傾げた。

　私は社内で奈津美以外と世間話をする相手はいない。私の仕入れることのできる情報は奈津美と、お昼休みのお手洗いでお喋りをする女の子たちから得ることが多い。

「まず一つめは…」
と、彼女はじっと私の顔を見た。
そして部屋に私達以外誰もいないのに、敢えて内緒話の態勢だ。
　私はその可愛さに、クスリと笑った。
「なに、なに？」
と、彼女に習って、ソバカス顔を近づけた。

　「四月から、社長の秘蔵っ子が本社営業部に配属になるんです」

　社長の秘蔵っ子。
　その一言が、私の心臓をギュッと掴んだ。