俺の、となりにいろ。
「は?金沢支店に転勤?そのあと福岡?」
声が裏返って驚いているのは、同期で設計部の紺野修二だ。
明るい茶髪に口の端にある小さなホクロが特徴の、爽やかな感じの男である。頭の回転が早く賢いうえに、人当たりの良い優しい性格は彼の長所だ。
紺野はこの会社で信用出来る男だと思った。
居酒屋で話し込む俺は、ビールを飲み干しておかわりを頼んだ。
「社長が「出世したいならドサ回りして経験を積んてこい」ってさ。赴任期間はとりあえず三年。その間にいろんな支店へ行くんだと思う」
と、俺は追加のビールに口をつけた。