俺の、となりにいろ。
紺野は焼き鳥をパクリと食べた。
「でもさ、入社半年で転勤だろ?出世街道まっしぐらだな。やっぱ次期社長はお前になるのかな?」
「やめてくれよ。社長なんて、性にあわねぇよ」
と、俺も焼き鳥に齧り付いた。
──このまま金沢へ行くのも、いろいろ未練がありすぎて辛いんだがな…。
俺は一人、心の中で迷いを抱えていた。
すると、紺野は焼き鳥の串を指先につまんで「それで?」と、俺を見据えた。カウンターに肩肘をつき、軽く微笑む。
「この前、江藤に会った時に愚痴られた。「桐谷がデータに存在しない女子社員を調べてくれ、とうるさい」って。もし、その人のことで頼みがあるなら、理由を聞く権利が俺にも発生すると思うが?」