俺の、となりにいろ。
本社へ戻る数日前、久しぶりに紺野から連絡があった。
「本社へ戻るって聞いたよ、よかったな。で、いつ戻ってくる?」
設計部の主任となった彼は、相変わらず穏やかな口調だ。
俺も、
「来週かな。山を切り崩して大きなベッドタウンをやるプロジェクトに参加する予定だ」
と、伝えた。
紺野も「一緒に仕事が出来る」と、喜んでいた。
「なあ、桐谷」
紺野の声がワントーン下がる。
「お前が探してる想い人……見つけたよ」
一瞬、幻聴のように聞こえた、あいつの静かな声。
手に持つ缶コーヒーが、ブルッと震えた。
急速に、心臓がドキドキとうるさい。