俺の、となりにいろ。
翌朝、紺野の言ったとおり、設計部へ顔を出した。
ドアを開けて中へ入ると、手押しカートに手を置いた女子社員の後ろ姿が目に入った。
「…野主任はみえますか?製図用紙を…」
ザワザワと騒がしい室内で、ポツポツと声が聞こえた。
背の低い、ほどよく肉付きのある体に、肩くらいまである少し畝ったくせ毛。
覚えのある背格好に、心臓がドクドクと連打する。
少し前へ回り込んで、その俯き加減の顔を見た。
「!!」
──ヤバい。
その横顔に、どうしようもなく泣きたくなる。
タジマエミだ。
七年ぶりの彼女に嬉しくて、すぐにでも抱き寄せて、そのソバカス顔の可愛い唇にキスができるくらい近くにいるのに。
自分の気持ちが顔に出ることを必死に食い止めることが、こんなに苦しいとは思わなかった。
ここが会社だという場所が恨めしい。