クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
恐々とするリアナとは対照的に、エルドラ王女に躊躇いはなかった。

「リカルド、遅いわよ」

少し眉を寄せた怒った顔でリカルドを睨む。

その表情は同性でも見惚れる程美しく可愛らしい。

(リカルド様もきっと心を動かされているのでしょうね)

そう思い彼の様子を伺ったリアナは、驚き息をのんだ。

リカルドはエルドラ王女には見向きもせず、リアナだけを見つめていたのだ。

しかも依然として怖い顔のままで。

騎士団長の怒り顔は迫力がある。部下達までもが遠巻きにする中、彼はリアナの前で膝をつく。

「怪我はしていないか? 痛いところはないか?」

短く問われ、リアナは声も無く頷く。

すると驚くべき素早さで抱き上げられ、視界が一気に高くなった。

唖然とした顔のエルドラ王女を見下ろす形になり戸惑っていると、リカルドは館に向けて足早に移動し始める。

「ちょっと、リカルド?」

エルドラ王女の呼ぶ声にも振り向くことすらしなかった。

(どういうことなの?)

この状況が掴めない。

非常事態の混乱の最中、リカルドはエルドラ王女ではなくリアナの保護を優先した。

周囲の目があるからかもしれないが、怖い思いをした王女を労わりたいと思うものではないのだかろうか。

エルドラ王女のところに行かなくていいのかと聞きたいが、張り詰めた空気を醸し出すリカルドに声をかける勇気が出なかった。

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