クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
領主館に到着すると、ダナが飛び出して来る。

「リアナ様!」

相当心配をかけたようで、血の気のない顔をしていた。

リカルドはダナに医者を呼ぶように言うと、二階に続く階段を上る。

てっきり自室に連れられるのかと思っていたが、彼はリアナを別の部屋に連れて行った。

そこはリアナが使っているよりも一回り広い部屋だった。

中央に居間の左右に扉が付いている。右側の扉の先が寝室で、リアナは中央の大きなベッドに下ろされた。

「あの、ここは?」

「当主の部屋だ。反対側には執務室がある」

「ではリカルド様の部屋?」

「そうだ」

リカルドは答えながらもリアナの背中にクッションを置き、楽な態勢を作ってくれる。

「ありがとうございます」

「大丈夫か?」

リカルドはベッド脇に椅子を用意し座ると、険しい顔でリアナの様子を伺って来た。

(……怒ってるんじゃなくて、心配してくれているんだわ)

心配で不安で、結果怖い顔になっているのだろう。

ほっとしてリアナは微笑んだ。

「大丈夫です。リカルド様が助けに来てくれましたから。エルドラ王女様も怪我はないと思います」

「そうか」

リカルドが安堵の溜息を吐く。

「あ、でもかなり走ったので疲れてしまったかも。エルドラ王女様はお身体が弱いし心配です」

きっと気にしていると思い、エルドラ王女の様子を伝えたつもりだった。しかしリカルドは別の点に反応した。

「リアナも走ったのか?」

声に焦りが滲んでいる。


「はい。なんとか館まで逃げようと思って。間に合いませんでしたけど」

リカルドの顔色が悪くなる。

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