クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
夜会当日の昼前に、リカルドは帰宅した。

「お帰りなさいませ」

「ただいま。留守にしていてすまなかった。変わりはないか?」

久しぶりに見た夫の顔には、疲労が浮かんでいた。

「私はこの通り元気です。リカルド様こそ大丈夫ですか? お疲れのように見えますけど」

この様子で夜会に出るのは辛いのではと心配になったが、夫は優しく微笑んだ。

「俺のことより自分の身体を気にかけてくれ。リアナが健康なのは分かっているが、それでも無理をしては駄目だと医師が言っていた」

思いやりのある夫の言葉に嬉しくなる。帰宅しなくてもリカルドはリアナを気にかけてくれていたのだと感じたから。

「はい。気をつけます」

久々に会った夫ともっと話したかった。しかしリカルドは時計に目を遣ると浮かない表情になった。

「少し仕事をしなくてはならない」

「え、今から? 出発まで休憩された方が良いのでは?」

「急ぎのものを終わらせたら休む。時刻には間に合うようにするから大丈夫だ」

リカルドは心配するリアナを置いて屋敷内の執務室に向かった。

彼には騎士団長としての任務の他に、ベルグラーノ伯爵家の当主としての役目がある。

部下が代わることもあるが、全てを任せる訳にもいかない為、負担が大きくなっている。

(私も役に立ちたいけど……)

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