クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
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二年前にリアナの父、ユベル・トレド前騎士団長が敵襲から王太子を庇い亡くなった。
トレド家は男爵の位を賜っていたが、騎士団長ユベルの功績による一代貴族だった為、当主が亡くなれば、爵位を返上しなくてはならない。
リアナは十七歳にして唯一の家族と身分を失い、哀しみに浸る間もなく、身の振り方を考えなくてはならなかった。
途方に暮れていたとき、リアナの先行きを案じた国王が、新たな騎士団長に就任したリカルド・ベルグラーノにリアナを娶るよう命令を下した。
それまで会話も交わしたことのないふたりだったが、王命に逆らえる訳もなく、お互いをよく知らないまま夫婦になった。
リカルドはリアナより七歳年上で、輝くプラチナブロンドに神秘的な紫紺の瞳が印象的な端正な顔立ちの青年だ。
騎士らしい凛とした立ち姿。隙のない身のこなし。
名門ディアス公爵家の出身の彼は、社交界での人気も高くリアナとの結婚が発表されたときには、多くの令嬢が嘆いたそうだ。
一方リアナはこれと言って目立つところのない、ごく普通の娘だった。
波打つストロベリーブロンドに、空色の瞳は比較的珍しい色合いだが、顔立ちはいたって普通で身体つきも中肉中背と特徴がない。
父は国王の信頼厚い騎士団長だが、一代限りの男爵で社交界では下位の気楽な身分。
いずれは父の部下の騎士のもとに嫁ぐよう言われ、それに相応しい教育しか受けていない。
本来なら高位貴族であるリカルドの妻になど、なれない立場だったのだ。