クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
艶やかで癖のない黒髪に、深い青の瞳。シミ一つない真っ白な肌に赤い唇。

深紅のドレスがとてもよく似合っている。清楚でありながら蠱惑的でもある。

つい目で追ってしまうような魅力に溢れた女性だった。

王女は優雅な仕草で上位貴族達との談笑をはじめる。

リカルドも当然挨拶に行くと思っていたが、彼はエルドラ王女に近付こうとはしなかった。


しばらくするとダンスが始まった。

リアナはリカルドに連れられ広間の端のソファーで休憩をすることにした。

ダンスは得意だが、身重の身体ではさすがに無理だから。

「大丈夫か? 体が辛くはないか?」

リカルドが心配そうに問いかけてくる。

「はい」

リアナは笑顔で頷くと、彼から受け取った果実水に口を付けた。ひんやりとしていて美味しい。

大して動いていないが熱気で喉が渇いていたようだ。

「今夜はもう引き上げよう」

「え? でもまだ挨拶をされていない方もいますよね」

貴族にとって夜会は大切な社交場で、ただ楽しみだけのものではない。挨拶を疎かには出来ないのだ。

「義理は果たしたし、リアナの身体の方が大切だ」

けれど、リカルドは今にもリアナを大広間から連れ出しそうな勢いだ。

そのとき、彼の背後から声がかかった。

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