クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
翌朝、リアナが目覚めるよりも早くにリカルドは屋敷を出て行った。

(久しぶりに会ったのに殆ど話せなかったわ)

落胆したが、これで良かったのだと思いなおした。

(顔を合わせても話なんて出来ない。まだ平気な顔をしていられないもの)


昨夜知ったリカルドとエルドラ王女の関係は衝撃的で、リナアに強い動揺をもたらした。

彼にリアナへの恋愛感情はないと分かっていた。

他の女性を想っているかもしれないと、考えたことも何度かある。

それでも実際目の当たりにすると、心は激しく乱れた。

その時感じた苦しさは後遺症となり、リアナの内でくすぶったまま。


憂鬱な気持ちが消えないままぼんやりと過ごしていると、ダナがやって来た。

「リアナ様どうされたのですか? 明後日には屋敷を出るのに、のんびりしていてよろしいのですか?」

「ああ……そうだったわね」

夜会が終わり次第、住まいを移すと約束していたが、気持ちは重くなっていた。

元々忙しくて屋敷に戻れない彼を安心させたくて転居の話を受け入れたのだ。

しかし彼の思惑が別のところにあると気付いた今、積極的に夫の生家に移る気になれなくなっていた。

(それにディエス公爵家に行ったら月光宮の噂が耳に入ってしまうかも……)

そんなのは嫌だ。夫が王女と過ごしていると思うと居ても立っても居られない気持ちになる。

< 29 / 117 >

この作品をシェア

pagetop