クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
生まれ育ちの違うふたりだから、夫婦になったばかりの頃は、なかなか打ち解けられずにギクシャクしていた。

リアナは騎士らしい隙のない空気を纏うリカルドを前にすると強い緊張を覚えて楽しい会話なんて出来なかったし、リカルドは無口な人だ。

夫婦の義務として時々ベッドを共にしていたが、甘い言葉がある訳でもなく淡々と事が進み、終われば背中合わせで眠りにつく。


それでも、リアナは少しずつリカルドに好意を持つようになっていた。

彼は言葉少なだけれど、リアナが話しかければ、どんな些細な内容でもしっかり返事をする。

夜会では決して側を離れない。なぜかと疑問だったが、そのような場に不慣れなリアナを心配しての行動だと、気がついた。

屋敷の皆は優しく自由ひのびのびと過ごせたし、季節ごとに新しいドレスが贈られる。

日々の暮らしの中で、リカルドのさり気ない優しさと気遣いを感じる機会は多かった。

彼のおかげでリアナは結婚して一年間、何不自由なく平和に暮らすことが出来たのだ。


(リカルド様には心から感謝しているわ)

王命とはいえ、何の利益にもならない自分を妻に迎え支えてくれているのだから。

だからこれ以上を望んではいけない。

妊娠を手放しで喜んでくれないからと言って、不満を持つなんて我儘だ。

(子供が要らないって言われた訳じゃないんだから)
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