クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「ダナ、もう決めたことなの。リカルド様には私から話して分かって貰うから悪いのだけど用意をしてくれる?」

「……分かりました」

ダナは戸惑いながらも、支度を整える為部屋を出て行く。

独りになるとリアナはペンを取り、リカルドへの手紙を書き始めた。

ディエス公爵家に行くのを取りやめ、トリアへ行きたい。近くに幼馴染のいる気楽な環境でのんびりしたいので許可して欲しいとしたためた。

(これでリカルド様は当分の間、私を気にせずに自由に過ごせるわ)

昨夜、散々考えて決心したのだ。

夫の恋を認めると。

それはリアナにとっては苦しいことだけれど、リカルドにとっては一番幸せになることだと思うから。

この一年、リアナの生活、心、全てを支えてくれたリカルドには心から感謝している。
彼から貰った優しさを少しでも返したい。

悲しさは消えないけれど、彼の恋はいつか終わると分かっている。ほんのひと時のことなのだから。

(エルドラ王女が嫁ぐ日まで私は見て見ぬふりをしよう)

だけど、そう決心しても月光宮に近いディエス公爵家にいれば、知りたくない話までが耳に届いてしまうだろう。

何も感じないでいられるほど、リアナは強くない。
きっと心を乱されて、苦しくなる。


だったらふたりの噂話など届かないような遠くに行き、離れて暮らす間は産まれて来る子のことだけを考えて穏やかに過ごしたい。

それに、リカルドもリアナが側に居ない方が、気持ちが楽になるはずだ。

自分自身の為であり、彼の為にもなる。

(これでいいんだ……)

手紙に封をすると、家令に月光宮の夫の下に届けるよう託した。
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