クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「それは……あの、子供が生まれる迄はゆっくり過ごしたいと思ったんです。元々私は王都での暮らしより田舎での暮らしの方が向いていますから。トリアはリカルド様の領地だし、幼馴染がいて心強いので」

「アリソン家は商家だが暮らしは豊ではないと聞いている。リアナが世話になれば負担になるだろう?」

それでもいいと言った割には、リカルドは明らかに気が乗らない様子だった。

「幼馴染に経済的に世話になる訳じゃありません」

幼馴染とは、父が騎士としての功績を上げ爵位を賜るまで一緒に過ごした姉妹のような間柄だ。

リカルドの言う通り、婚家の商売は細々したものだが、それでも幸せに暮らしている。

リカルドと結婚してからは会えずにいたが、手紙のやり取りは続けていた。

「ただ話をしたり、お茶を飲んだり普通の友達の交流をしたいだけです」


「だが王都とトリアは遠い。もし何か起きても直ぐに駆けつけることが出来ない。側にいられなくなる」

リカルドは未だリアナをディエス公爵家の方に行かせたいようだった。

トリア行きをなんとか止めようとしている気持ちが伝わって来る。
しかしなぜ彼がそこまで頑なになっているのか分からない。

< 35 / 117 >

この作品をシェア

pagetop