クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「そうなんだ。騎士団長って大変ね」

「うん」

「でもさ、それでも我慢し過ぎない方がいいよ。妊娠中は気持ちが不安定になるって言うし、いくらリアナが健康でも弱るときがあると思うんだ。そんな時は旦那様に来て欲しいって頼まないと駄目だよ。リアナ昔から限界まで我慢しちゃうから心配だよ」

リアナは静かに目を伏せた。

ミラはうっすらと、リアナの結婚生活が順調でないと気付いているのではと思った。

だから無理をしないようにと警告してくれている。

(だけど、どうすればいいの?)

リカルドの反対を押し切ってこのトリアにやって来たくせに、今更寂しいなんて言える訳がない。

側に居られないと言われたとき、“大丈夫”と答えたのは自分自身なのだ。

(今更、大丈夫じゃないなんて……)

そんな勝手が許される訳がない。

(やっぱり私から会いたいと言っては駄目。リカルド様の恋を邪魔しないって決めたんだから)

ただいくら決心しても、悲しくなる気持ちは止められなかった。

まだ膨らんでいないお腹。それでも確かにここには夫との子が宿っている。

本当は夫婦揃って、子供が生まれてくるまでの間を過ごしたかった。

(でもあのままじゃ、耐えられなかった)

彼の近くにいたら決意が揺らぐ。

他の人を想うリカルドの側には居られない。それ程、夫を愛しているのだから。



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