クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
と言っても、リカルドに出来ることは殆ど無かった。

ユベルの意思は固く、訴えを聞いてくれる気配はない。

夜会に出ない彼女とは会う機会もない為、直接求婚するのも不可能。

騎士団長の屋敷に強引に押し入ることは出来ない。下手をすれば反逆罪に問われてしまう。

時間だけが過ぎ、ついに遠征の日が訪れた。



ここ数年西の国境で隣国との争いが起きていた。

徐々に大きくなる諍いに蹴りを付ける為に、ヴァレーゼ王国王太子自らが騎士団を率いて戦地に赴く事になった。

王太子はリカルドにとって従兄にあたる。その関係もあり当然自分も従軍すると思っていたが、ユベルはリカルドを遠征軍から外す決断をした。

代わりにバリーを共に王都を発った。

遠征軍が戻ればリアナとバリーの結婚が進んでしまう。
そんな焦燥感ばかりが募り、遠征軍が無事に帰還しないという未来など考えもしなかった。

隣国はヴァレーゼ王国の半分以下の国力しかなく、敗北するとも苦戦するとも思えなかったからだ。

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