クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
ユベルの喪が明けると直ぐに小規模な結婚式を挙げ、リアナと正式な夫婦となった。

花嫁に相応しい純白のドレス姿の彼女は素晴らしく可憐で美しく、他の誰にも見せたくない程だった。

独占欲を堪えるのに苦労したが、初めて恋をした女性を妻に出来たのだ。

自分程幸福な男はそういないだろう。

緩みそうになる表情を取り繕うのに苦心し結婚式は無事に終わり、リアナを屋敷に連れ帰った。

リカルドは結婚が決まったときに、父からベルグラーノ伯爵の位を譲り受け、同時に自分の屋敷を手に入れた。

ふたりで眠ることになる寝室をはじめ全ての部屋を上品な調度品で揃えたので、リアナは喜んでくれるだろうと思っていた。

しかし、彼女は美しく整った部屋を見ても笑顔を浮かべることなく、畏まった様子でリカルドに頭を下げて来た。

『旦那様、王命とはいえ私を娶って下さったことを心から感謝しています。ベルグラーノ伯爵家の名に恥じないよう努力して参りますので、末永くよろしくお願い致します』

リアナの言葉は丁寧だったが、定型的なものでそこに彼女の感情を見つけることは出来なかった。

初めて会ったときにのような自然な微笑みはない。まるで人形のように、リカルドの前で頭を下げている。

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