クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
騎士団本部内の執務室で、リカルドは深い溜息を吐いた。

恐れていたことが現実となった。

【ヴァレーゼ王国騎士団の兵士、バリー・アリソンを探したい】

リアナがトリアに行くと言い出した時から、いつかこんな時が来るのではないかと思っていた。

「どうすればいいのだろうな」

珍しく独り言が漏れる。

滅多に頼み事をしてこないリアナが、珍しくリカルドを頼って来た。

本来ならば何をしても叶えてやりたい。しかしこの件だけはどうしようもない

バリー・アリソンは、王太子襲撃事件の後、消息不明となり今もまだ見つかっていないからだ。

消えたのはバリーだけではなく、従軍していた兵士数名。捜索はしたが、結局見つからないままでいる。

襲撃事件から一月ほど経ったが手がかりすらなく、捜索の規模が縮小された。同時に、家族に知らせを出した。

ただリアナには言わなかった。バリーと正式に婚約をしていた訳では無かったし、リアナ自身も言い出さなかったからだ。

リカルドと結婚した為、バリーのことは口にしないようにしているのだろうと思っていたが、やはりそう簡単には忘れられなかったのだろうか。

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