クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
妊娠すると気分が悪くなると聞いていたが、リアナの体調は至って良好だった。
散歩程度では疲れないし、食欲はむしろ増している。
「リアナ様、あまり食べ過ぎてはいけませんよ」とダナに注意をされる程だった。
「すぐにお腹が空いてしまうの」
ダナは苦笑いになりながら、綺麗に切った果物をテーブルに並べる。
「健康なのは良いことですけどね」
「きっとお父さまに似たんだわ。健康で臥せっているところなんて一度も見たこと無かったもの」
リアナの父は屈強な騎士で、国一番の剣の腕を持ち、近隣の国からも一目置かれていた。
身体が大きく強面で他人には怖がられることが多かったが、家では娘想いな父親だった。
特に病気がちだった母が亡くなったあとは、どんなに忙しい時でもリアナの様子を気にかけてくれていた。優しく情に溢れた人だったのだ。
(あんなに強かったお父様が亡くなったなんて今でも信じられない)
だけど紛れもなく現実だ。
父ともう会えないのだと思うと辛く悲しくなる。
それでも絶望せずにいられたのは、リカルドが夫になり側に居てくれたからだ。
隣に彼の存在を感じるとき、独りじゃないんだと心強くなった。
そして今、彼はリアナに新しい家族を授けてくれた――――。
まだ膨らんでいない腹部を、そっと撫でる。
(ここに赤ちゃんがいるなんて、嘘みたい……でも嬉しい)
良い母親になるよう頑張りたい。
大切に育てて行こう。沢山愛情を注いで、出来ればリカルドと共に……。