クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「今夜一晩の滞在のはずでは?」

「気が変ったわ。いいじゃないの。あなたは私が居たら不満かしら? さっきから憂鬱そうなお顔をしているけれど」

エルドラの言葉の後半は、リアナに向けてのものだった。

「いいえ、そのようなことはございません。王女殿下のご滞在を歓迎致します」

リアナは慌てて頭を下げる。

いくら心の中が騒めいていても、王女に対して無礼な態度を取ってはいけない。

「そう。良かったわ。リカルド早速部屋に案内して」

エルドラは微笑むと、リアナの横を通り過ぎ領主館へ向かって歩いて行く。

当然のようにリカルドの腕にかかった手を離さなかった。

リアナは、茫然として領主館の中に消えて行く二人の姿を眺めていた。

使用人達はリアナを気にしながらも、リカルドを追って行く。

残ったのは、ダナと二人だけ。

「リアナ様……大丈夫ですか?」

ダナが心配そう呼びかけて来る。

「ええ。でも少し気持ちを落ち着けてから部屋に戻るわ」

「え? どちらにいらっしゃるのですか?」

「いつも通りその辺を歩いてくるわ。突然王女殿下が来たから驚いてしまったの。ダナ、あとはよろしくね」

リアナは無理やり微笑みを浮かべると、領主館の裏庭に向かった。

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