クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「リアナ、大丈夫か?」

「はい」

リアナは大丈夫だ。ミラの家族のことだから心配ではあるけれど、バリーとは面識もない為、心配はしても当事者の気持ちにはなれていない。

しかしリカルドはかなり心配しているようで、気遣いの声をかけて来る。

「騎士団での捜索も強化しているところだ。だからまだ諦めるな! 思いつめてはお腹の子にも障る。そんな悲しそうな顔をするな」

「はい」

「詳しくは言えないがもう少しすれば状況も変わる。絶望するのはまだ早い」

「そうですね。希望を持たないと」

リアナは微笑みを浮かべ頷いた。

(リカルド様はなんて情け深いの。私よりもよっぽどバリーを心配しているみたい)

強く優しい夫が誇らしい。リアナの胸の中は穏やかな気持ちで満たされたが、なぜかリカルドは寂しそうに見えた。


それからしばらくすると、風が冷たくなって来た。

体が冷えたのか小さなくしゃみをすると、リカルドは慌てた様子でリアナの身体を抱き上げる。

「風邪をひいたら大変だ。直ぐに戻ろう」

「は、はい」

リカルドの腕は逞しく頼りある。

リアナをしっかりと支え軽々と運んでくれる。守られているのを感じ、彼に頼りたくなる。

広い胸に顔を埋めると、リアナを抱く腕に力が籠った。

(リカルド様……ずっとこうしていられたらいいのに)

誰に気遣うこともなく、いとも側にいられたら。

(いつかそんな日が来るといい)


部屋に着くまでそう願い続けた。

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