クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
夕食までの間は、部屋で大人しく読書をして過ごした。

リカルドともっと話をしたかったが、彼にエルドラ王女からの呼び出しがかかったのだ。

がっかりしたが王女には逆らえない。それにリカルド自身が望んでいることだろう。

(ふたりの邪魔をしないと決めたけど……)

リアナは「はあ」と大きな溜息を吐いた。


今までだって辛かったが、今はその比ではない。

同じ館でふたりの気配を近くに感じるのは、かなりきつい。


それにリアナの心持ちも変化していた。

彼が子供の誕生を待ち望んでいることを知ったから。

(私も生まれてくる子供も大切な家族だって言ってくれた……)

リカルドが女性として愛しているのはエルドラ王女かもしれないが、リアナと子供のことも家族として大切に想っていてくれているのだ。

それが本心なのは、彼の目を見れば明らかだった。

(私、幸せだと思った)

一緒に子供の誕生を喜べることが嬉しくて仕方ない。

彼への愛情が増すのは当然だと言えた。


本を読んでいても、気が付けばリカルドの事ばかり考えている。

傍から見てもぼんやりとしていたようだ。

「リアナ様、大丈夫ですか?」

ダナにも心配される始末。

リアナは集中出来ない読書は諦め、ぱたりと本を閉じた。

「大丈夫。でも今日は読書って気分じゃないみたい」

本を置くとお茶に手を伸ばす。
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