クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
リアナ好みのあまり甘くなくすっきりした味わいのものだ。

「旦那様は何日くらい滞在出来るのですか?」

お茶菓子を並べながらのダナの質問に、はっとした。

(そう言えば、聞くのを忘れていたわ)

「まだ聞いてないの。あとで確認するわ」

「そうなんですか。しばらく滞在して下さったらいいのですが」

「うん。でも王都でもいろいろ問題があるみたいだし、難しいでしょうね」

騎士団長が長期不在では騎士達も不安だろう。

「王都で問題があるんですか?」

「あっ、ダナに言って無かったわね。ミラに聞いたんだけど王都で人が居なくなる不可解なことが起きているんですって」

「そうなんですか? なんだか薄気味悪い話ですね」

ダナは憂鬱そうに顔を曇らせる。そう言えば彼女は昔から怪奇的な話が苦手だった。

今も早々に話題を変えて来る。

「夕食の席のドレスはどうしましょうか?」

「あ、そうだったわね」

普段は夕食の為だけに着飾ったりはしないが、今夜はエルドラ王女と同じテーブルに着くので、衣装にも気を遣う。

(同じ色のドレスは避けるのが礼儀たろうけど、何色ですか? なんて聞きづらいし)

しばらく考えて、淡い色のドレスから選ぶことに決めた。

王女は夜会のときも今日も鮮やかな色味の衣装を身に付けていた。それらは王女の掘りの深い美しい顔立ちに映えていたから、好んで選んでいるのだろうと考えた。

手持ちの中から比較的ゆったりとしたデザインのクリーム色のドレスを選んだ。

髪はハーフアップにして金細工の髪飾りで止める。どちらもつい最近リカルドが贈ってくれたものだ。

初めて袖を通したが、リアナに良く似合っていた。

「旦那様はリアナ様をよく分かっていますね。贈り物はいつもとても似合うものばかり。リアナ様を想って真剣に選んでくれているのでしょうね」

「そうだったら嬉しいのだけど」

「そうに決まってますよ」

「……そうね」

これからエルドラ王女と対峙すると思うと、気後れしてしまっていたのだが、ダナに励まされ、少しだけ自信が湧いた。

部屋を出ると勇気を出して、食堂へ向かった。
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