クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「急にすまない」

帰宅して直ぐに来たのだろう。リカルドは任務中に着用する詰襟の軍服姿のままだった。

彼はリアナの私室のソファーに腰を下ろしたが寛ぐ様子はなく、直ぐに話を切り出して来た。

「リアナに頼みがある」

思いがけない言葉にリアナは目を丸くする。

(リカルド様が私に頼み事?)

結婚して初めてのことだ。

戸惑いを覚えたが、直ぐに気持ちを引き締めた。

夫が何らかの事情で困っていてリアナの力を必要としているのなら、喜んで協力したい。

「分かりました。私に出来る事なら何だってやります。出来なそうなことでも、精一杯努力します」

張り切って告げるとリカルドは意外そうな表情になった。それから気まずそうに目を伏せる。

「リカルド様?」

リカルドはやや躊躇った様に間を置いてから言う。

「頼みと言うのは、しばらくの間リアナにこの屋敷を出て欲しいんだ」

「……え?」

リアナは続く言葉を失った。あまりに予想外の話で反応が出来なかったのだが、段々と衝撃が身体を巡り始める。

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