クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
まるで矢のように次々と飛んで来る言葉に耳を塞ぎたくなる。
ぎゅっとスカートを握り耐えていると、呆れたような声がした。

「言い返すことも出来ないのね。あなたのリカルドを想う気持ちはそんなもの? 子供までいるのに情けないわ」

「……申し訳ありません」

「これ以上話したくないわ。下がって頂戴」

「はい。失礼致します」

リアナは礼をするとよろけそうになりながら踵を返し、その場を逃げ出した。

身体が震え、心臓が煩く脈打っている。

それ程、エルドラ王女との対峙は衝撃的でリアナは深く傷ついた。

エルドラ王女の言う通り、リアナはリカルドに相応しい身の上ではない。

それでも彼を想う気持ちは本ものだと自信を持って言える。けれど、

(私……何も言い返せなかった)

リカルドの立場を気遣ってというだけでなく、夫の愛する女性の前で、気持ちを見せる勇気が持てなかったのだ。

(私もリカルド様を愛していると言ったって、どうしようもないもの。リカルド様はエルドラ王女を愛しているのだから)

惨めな気持ちになるだけだ。

動揺したまま無意識に歩き、気付けば裏庭から続く池のほとりに辿り着いていた。

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